コンピュータゲームは単なる娯楽の域を出ないのか?
そうは思わない。戦略シミュレーションゲームならば実社会に役立つ知識を得ることが出来るはずだ。例えば太平洋戦争ゲーム。太平洋を暴れ回っていると「あの都市はここにあったのか!」と気づくことがある。これは地理の勉強になる。まあ、これは卑近な例だが、上手く作れば,ゲームを通していろいろな事が学べるはずだ。
ゲームを終わった後にユーザが「いろんなことを学んだなあ。」と思ってくれるゲームを作りたいものだ。
映画製作者は,単なるおもしろさだけを追求するだろうか?感動や人間愛を与えてこそ真の芸術ではないか?
ゲームは娯楽か芸術か?凝って作れば芸術になる。
ゲームを終わった後、ユーザが「ああ遂に終わった。けど時間ばかり潰して虚しい。」と思うだけでは作者も虚しい。ユーザのエネルギーをバーチャルな空間に投げ捨ててしまうだけではもったいない。ゲームで学んだことを現実の世界に反映させ、よりよい社会を作り上げる。
膨大な手間暇をかけて作った作品が単なる時間潰しに終わるのではなく、世の中のためになるものであったなら、作者もこの世に生まれてきた甲斐があったというものだ。
そこで今、私が作りたいのは政治ゲーム。
なぜなら日本の将来は歴史的な危機状況にあるからだ。
財政危機 日本の将来
近頃、財政危機だと騒がれている。どのように危険なのか、ここに述べよう。以下は各政党の96年衆議院選挙直前の党方針抜粋である。
自民党
国財政は大幅 な不均衡状態 にあり、先進国 の間でも最悪 の状況。高齢 化は否応なく 加速・進展。現 在の世代が将 来の世代にツ ケ回し。
新進党
目先の財 政均衡をはかるだけで は、国・地方 ともに巨額 の借金をかかえる財政 の再 建は不 可能"
共産党
日本の財政は、先進国のなかで最悪。バ ブル崩壊後、税収が 大きく落ち込んだのに 「景気対策」の名でこ の放漫財政をさらに 拡大し、あっというまに 国債残高を急増させ たから。
民主党
所得税減税の先行実施や累次の大型補正予算の実施等に より、財政状況は悪化し、 先進国の中ではイタリアに次いで悪い危機的水準。
96.11月20日 厚生省
94年度 | 2025年度 | 比較 | |
国民負担率 | 40% | 70% | 75%増 |
給料手取り分 | 60% | 30% | 50%減 |
96.12.25 4人家族なら1352万円の借金
経済審構造部会の試算によると、30年後には手取りが半分になるということだ。
ひと昔前で言えば日本の国土を半分占領され,残った畑をみんなで分け合って耕すようなものだ。
大多数の人にとって働く理由は家族を養うためである。しかし、これではいくら働いても国民負担率の増加によって少しも暮らしが楽にならない。30年後に手取り半分の状態で、家のローンが払えるか? 子供を大学に送れるか? いや、30年後のことだから自分たちはまだしも子供達は生活していけるのだろうか?
これではいくら仕事をしてお金をある程度稼いでも,子供達に良い暮らしをさせることは出来ない。
ゲームで学ぶ経済学 政治学
この歴史的危機状況をどうしたら打開出来るのだろう。
この30年後の予測もシミューレーションによるものである。もしこれがゲームに作り替えられ,上手く政策を行うことで危機が回避できることを多くの人が理解したならば、現実の世界で何をすべきかわかるだろう。政治に興味を持つ人も増えるだろう。
しかし政治の世界は政策立案だけでは済まない。他部門との折衝や調整、理屈に合わない利害関係など、どろどろしたものが渦巻いている。海外,国内のテロ、近隣諸国の軍備拡張、移民流入で国民の雇用圧迫、ヒューマニズムだけでは済まないいろいろな問題が発生するのである。
現実主義な政治ゲームを作ってみたいものだ。
課題は
問題は「政治の現実をそのままゲームにしたのではおもしろくない」ということだ。従来,戦略ゲームというのは,例えば三国志ゲームや戦争ゲームのように領土拡大の野心を実現するのがおもしろいのである。高度成長志向にのってガンガン攻めまくるところにおもしろみがある。
しかし現実の世界で領土拡大やこれ以上の経済急成長を望むべきだろうか?
これからは環境保護や食糧問題,財政危機といった,どちらかといえば攻めよりも守りが大事な時代である。当然、情報産業の覇権を制覇するような攻めの部分もあるが、攻めまくって世界を独占してよいものではない。各国とのバランスを考え、例え圧倒的に強くともある程度の所で独占を止める必要がある。
そうなると,何をゲームのゴールに定めれば面白いゲームになるのかわからないのである。