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(注)選挙区と比例区の合計

自民民主共産公明自由社民さきがけその他
獲得議席数452715965019
増減-15+9+9-2+1-70+5
非改選582081368310
最終更新時刻: 98/07/14 19:25

首相、閣僚懇談会で参院選の敗北を陳謝
自民、牙城の1人区で苦戦・参院選分析
選挙協力、「民主・公明」は成果
東京選挙区、無党派層5割が民・共に
共産、公明を逆転・比例得票数
自民、過半数割れも・次期衆院選予測



首相、閣僚懇談会で参院選の敗北を陳謝

 参院選での自民党大敗後、初めての閣議が14日開かれ、重苦しい雰囲気に包まれた。閣議後の閣僚懇談会で、橋本竜太郎首相(自民党総裁)は「参院選で全国各地を応援で回ってもらったが、私の力が及ばず負けたことは誠に申し訳なくおわびしたい」と陳謝。そのうえで「(内閣総辞職する)臨時国会召集まではきちんと仕事をやっていただきたい」と指示した。

 これを受け、今回の選挙で落選した大木浩環境庁長官が「一生懸命頑張ったが思うようにいかなかった。今後は1人の国民としてやっていきたい」と弁明。伊吹文明労相は「この経済情勢の中で首相は必死にやってきた。行政改革などは今後も継続するだろうし、何年かすれば必ず首相の業績は評価されると確信している」と述べた。


自民、牙城の1人区で苦戦・参院選分析

 自民党が参院選で惨敗に終わったのは、定数1人の選挙区の半数で前回と比べて相対得票率(有効投票数に占める得票数の割合)が低下、自民党の牙城(がじょう)といわれてきた地域で苦戦を強いられたことが響いた。複数の候補を擁立し、共倒れに終わった選挙区ではいずれも候補者を一本化していれば一議席を確保できた計算で、自民党の選挙戦術の失敗も浮き彫りになった。

 自民党は24ある1人区のうち16選挙区で議席を得たが、前々回で沖縄を除くすべての1人区で圧勝したのと比べると大幅減。石川、山梨、山口、徳島などでは消費税やリクルート事件などで批判を浴びて議席を失った「89年選挙の再来」との声もあがるほどだった。

 1人区での自民党の不調ぶりは、旧新進党としのぎを削って伸び悩んだ前回と比較すると一層鮮明になる。相対得票率で前回実績を超えたのは12選挙区。富山、三重、奈良、香川、愛媛、佐賀では民主党や野党系無所属候補に競り勝ったとはいえ、得票率は前回より低下しているからだ。

 複数擁立区の決算は微妙だ。二議席を独占したのは群馬と鹿児島だけ。群馬では自民党公認の中曽根弘文氏が約30万票、上野公成氏が約23万票をそれぞれ獲得しており、2人の得票数の合計が県内の自民党の比例得票数である約31万票を大幅に上回っている。

 これとは対照的に2人の公認が共倒れした東京では公認の得票数の合計は約107万票に過ぎず、東京での自民党の比例得票数と大差がない。従来の自民党支持層にとどまらず、どれだけ新たな票を掘り起こすことができたかどうかが明暗を分けたといえる。

 自民党は群馬と鹿児島を除く複数擁立区でいずれも民主党や無所属候補にトップ当選の座を奪われた。だが、議席ゼロの東京、埼玉、神奈川、岐阜、愛知の五選挙区で2人の公認の得票数を単純に合わせると、各選挙区のトップ当選者の票を大きく超える。今回に限って言えば、候補者を1人に絞って支持団体などの票を手堅くまとめる作戦をとれば、議席を失う事態は回避できた可能性がある。


選挙協力、「民主・公明」は成果

 野党各党は「自民党の単独過半数阻止」を合言葉に選挙協力を実施して22人が当選、橋本竜太郎首相退陣につながる原動力となった。ただ、民主党と公明が選挙協力した選挙区ではほぼ狙い通りの効果を上げたものの、民主、社民両党の選挙協力は両党の支持票をまとめ切れずに今一つの成績に終わった。

 民主党と公明が選挙協力したのは、青森、神奈川、新潟、長野、愛知、岐阜、広島の七選挙区で、新潟以外の6人が当選した。公明の支持母体である創価学会と民主党の支持労組がそれぞれ基礎票を積み上げ、無党派層の反自民票も吸収したのが勝因だ。

 例えば民主党と公明が推薦した青森選挙区の田名部匡省氏の得票約34万票を分析すると、民主、公明両党が比例代表選でそれぞれ得た票の合計約19万票に約15万票を上積みした結果になっている。元農相の知名度に加え、自民党公認の金入明義氏と事実上の一騎打ちになったことで、大幅な反自民票の獲得につながったと見られる。

 一方、公明を除く民主、社民両党による選挙協力は、無所属候補を推薦した12選挙区。このうち、当選したのは山梨、石川、徳島の3人にとどまった。

 民主、社民両党が推薦した福岡の藤田一枝氏の獲得票は約41万票。民主、社民両党が同選挙区で得た比例代表票の合計の約61万票を大きく下回る。無党派層の反自民票が民主党や公明が推薦した弘友和夫氏や、共産党公認の津野豊臣氏に流れたことや、民主党の支持票が弘友氏と藤田氏に分かれ、支持票を食い合った結果とみられる。

 「民主党には風は吹いたが、社民党には吹かなかった」(民主党選対幹部)ことも影響しているようだ。


東京選挙区、無党派層5割が民・共に

 今回の参院選で無党派層の約5割が民主、共産両党に投票、両党の躍進の原動力になり、自民大敗という劇的な結果をもたらしたことが明らかになった。

 投票率は95年の前回選挙より14ポイント強高い58.84%に達したことから、無党派層が積極的な投票行動に出たとみられていた。12日に投票に訪れた有権者8353人を対象に実施した共同通信社の出口調査によると、「支持政党なし」と答えた無党派層は21.2%で、トップの自民党支持層35.4%に次ぐ勢力として選挙結果に大きな影響力を行使した形だ。

 この人たちに比例代表選で投票した政党を質問したところ、最も多かったのが民主党の29.3%。2番目が共産党の20.0%で、この二党で無党派層のほぼ5割の票を獲得した計算になる。

 他の党に投票したのは自民党10.7%、公明10.0%、自由8.3%、社民8.1%と、約1割か、それ以下にとどまっており、投票率アップで増えた票の受け皿にはなれなかった。

 選挙区選でも、例えば東京選挙区では無党派層のうち27.1%が無所属の中村敦夫氏に投票。次いで、民主党の小川敏夫氏21.3%、共産党の井上美代氏17.8%、となっており、当選圏入りを後押しした格好。逆に共倒れした自民党の小野清子氏と塚原宏司氏はそれぞれ3.0%、3.1%しか無党派層の支持を得られなかった。


共産、公明を逆転・比例得票数

 改選六議席の共産党は選挙区で7人、比例代表で8人の計15人が当選、これまで最高の74年参院選の13人を上回る大躍進となった。その結果、同党は悲願だった参院で予算を伴う法案提出権に必要な21議席(非改選議席を含む)以上を確保した。

 共産党の躍進ぶりは全選挙区で、公認・推薦候補が前回参院選の得票率を上回ったということからも読みとれる。前回参院選では公認候補の得票率が10%未満という選挙区が34選挙区あった。今回は公認候補を立てなかった沖縄と高知を除いて得票率10%未満の選挙区は新潟、鹿児島など十選挙区にとどまった。

 比例代表では北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川、兵庫などの各選挙区で初めて共産党票が公明票(かつては旧公明党票)を上回り、東京では100万票の大台に乗った。

 6年ぶりに「公明」の名称で戦った旧公明勢力は東京と大阪に公認候補を擁立し、“準公認”扱いの無所属の推薦候補も埼玉、福岡に立て、この四選挙区を重点に創価学会の組織力を生かした選挙戦を展開した。しかし、比例代表では約774万票を確保したものの共産党の約819万票には及ばず、比例代表の得票率では自民、民主に次ぐ第三位の座を共産党に初めて明け渡した。


自民、過半数割れも・次期衆院選予測

 今回の参院選の結果を衆院選にあてはめて主要政党の獲得議席を予測すると、自民党が大幅に議席を減らして衆院でも過半数割れする可能性が強い。日本経済新聞社の予測では、自民党の小選挙区と比例代表を合わせた獲得議席は現有より36少ない227にとどまり、衆院の過半数に24足りなくなる。

 参院選で無党派層の支持を集めた民主党は衆院選でも大都市圏を中心に順調に議席を伸ばし、勢力は現有92議席から160議席前後に増える。共産党も同様で、現有26から45前後へと、倍増近い議席の伸びを示す。

 支持団体の組織票が安定している旧公明党勢力(参院の公明の票をもとに、衆院の新党平和の獲得議席を予想)は現有38議席のまま変わらないか、わずかに議席が減る程度。現有14議席の社民党も選挙区は苦しいが比例代表で一定の支持を集めるため、ほぼ横ばいとなりそうだ。

 一方、自由党は小選挙区では当選圏入りが厳しく、現有40議席から半減することも。新党さきがけは現有二議席を失う可能性もある。

 各党の参院選の比例代表の得票を300の小選挙区や11の衆院比例ブロックに分け、ドント計算などをすることで各党の予想獲得議席数を判断した。参院選に候補者を立てた政党がそのまま衆院選で戦ったという想定で、新たな政党が誕生したり、複数の政党が選挙協力した場合は各党の予想獲得議席数も変わる。

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