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強豪チームの没落

 

昔、強いプロ野球チームがありました。

選手は若くてまじめ。 長時間練習に文句も言いません。 チームワークもよく、選手はチーム戦術に忠実で確実に実行します。 技術は世界のトップクラス。 個人による天才的なプレーは少ないのですが、 ランナーを進めるチームバッティング、 勤勉なカバーリングと互いのコーチングに確実な守備を得意としていました。

選手だけでなく、裏方さんも高い技術をもっていました。 選手のコンディションを整えるトレーナー。 道具をメンテナンスする用具係。 天候を勘で読んで芝生の長さを最適に刈り込むグランドキーパー。 そういった裏方さんが選手を陰で支え、球団全体が高い技術を持っていました。

球団は勝ちつづけ、人気もうなぎのぼり。 球団はスタジアムを拡張し、どんどん大きくなります。 儲けた収益はスタジアムの拡張工事と資金運用財団に回しました。

しかし順調経営のはずが、思惑がはずれてきました。 スタジアムの拡張もある程度を超えると拡張する割には思ったほど観客が入りません。

でも建設をやめることはできませんでした。 なぜなら球団幹部は退職後に建設会社の顧問になる暗黙の了解があったのです。 そして球団のホームタウンの就労人口は建設関連の比重が3割近くなってました。 スタジアム建設をやめたら失業者が増えて、観戦に来る人もいなくなってしまう、と球団経営陣の言い分です。 収益が落ちてもスタジアム建設をやめるにやめられない。 本末転倒のことが起きてきました。

そして遂に収益を預けた資金運用財団が株で大損を出してしまいました。 球団の経営は赤字になります。 でも球団経営者は自分達の給料を下げるとか経営陣を減らすとかはしません。 そこで裏方さん達をクビにします。 すると選手のコンディションが維持できなくなり、チーム力が落ちてきました。 だんだん負けてくると観客が減ってきて収益が減ってきます。

遂に選手を高値で相手チームに売り出しました。 今まで味方だった選手が、今度は敵として刃向かってきます。

チームは収益減少とともに新人獲得と育成をやめてしまいました。ものになるまで費用をかけて育るより、手持ちのベテランだけで何とか乗りきろうと考えました。ベテラン選手には複数のポジションがこなせるよう指令します。新人はもう獲得しません。

チームの技術力はどんどん低下していきます。 内部はガタガタです。 でも経営陣は替わりません。 このチームはどうなっていくのでしょうか。

一方、相手チームの戦力は高くなります。試合は負けがこんできて観客動員数が減る一方です。悪循環に陥って這い上がれません。

球団は市民球団で、市民が株を持っていました。 でも株主総会に出席するのはスタジアム建設に従事する市民だけで、球団経営に反対しません。 他の株主市民は株主総会に出席せず、文句を言いません。 スポーツ紙に書かれた球団批判の記事を読んで酒場で球団非難をぶつけることはしますが、肝心の株主総会に出席して文句を言うことはしないのです。 このまま行けば手持ちの球団株は紙切れになるのがわかっていながら。

10年後、ホームタウンに残ったのは、 やたら大きくて観客がいないスタジアムと、 球団経営者の大邸宅だけでした。

このチームの名前は「JAPAN」

選手とは製造メーカ、 裏方とは中小企業の町工場、 球団経営者とは官僚です。 市民とは日本国民です。

日本は高度な製造技術をアジアにどんどん移して国内が空洞化しています。 国家運営方針は相変わらず、採算割れの土木工事のオンパレード。 官僚や公務員は自分達の天下り先しか考えていません。 現場で働く労働者はクビですが、机に座って何もしない役人だけが安泰です。

でも多くの国民は選挙に投票せず、現状政府の組織票の人だけが投票するので経営陣(現状政府)は変化しません。

企業は手持ちの社員の労働時間を増やす一方で新人を取らないようになりました。高卒の半分、大卒の10%は正社員になれずフリーターです。若者の技術が向上しません。10年経ったら採用面接官に「あなた、何が出来ますか」と問われて困る若者ばかりになります。ひいては日本全体の技術力が低下します。でも企業は目先の利益しか考えないのでそんなことはおかまいなし。

企業は若者を雇用するよう、政府は企業に強制すべきですが、政府は若者の味方ではありません。なぜなら若者が政治家の味方ではないから。若者は選挙に投票しないが老人は投票する。結局、老人に有利な政治家が当選して政府を作ります。

参考:無関心党

 


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