自民党が参院選で惨敗に終わったのは、定数1人の選挙区の半数で前回と比べて相対得票率(有効投票数に占める得票数の割合)が低下、自民党の牙城(がじょう)といわれてきた地域で苦戦を強いられたことが響いた。複数の候補を擁立し、共倒れに終わった選挙区ではいずれも候補者を一本化していれば一議席を確保できた計算で、自民党の選挙戦術の失敗も浮き彫りになった。
自民党は24ある1人区のうち16選挙区で議席を得たが、前々回で沖縄を除くすべての1人区で圧勝したのと比べると大幅減。石川、山梨、山口、徳島などでは消費税やリクルート事件などで批判を浴びて議席を失った「89年選挙の再来」との声もあがるほどだった。
1人区での自民党の不調ぶりは、旧新進党としのぎを削って伸び悩んだ前回と比較すると一層鮮明になる。相対得票率で前回実績を超えたのは12選挙区。富山、三重、奈良、香川、愛媛、佐賀では民主党や野党系無所属候補に競り勝ったとはいえ、得票率は前回より低下しているからだ。
複数擁立区の決算は微妙だ。二議席を独占したのは群馬と鹿児島だけ。群馬では自民党公認の中曽根弘文氏が約30万票、上野公成氏が約23万票をそれぞれ獲得しており、2人の得票数の合計が県内の自民党の比例得票数である約31万票を大幅に上回っている。
これとは対照的に2人の公認が共倒れした東京では公認の得票数の合計は約107万票に過ぎず、東京での自民党の比例得票数と大差がない。従来の自民党支持層にとどまらず、どれだけ新たな票を掘り起こすことができたかどうかが明暗を分けたといえる。
自民党は群馬と鹿児島を除く複数擁立区でいずれも民主党や無所属候補にトップ当選の座を奪われた。だが、議席ゼロの東京、埼玉、神奈川、岐阜、愛知の五選挙区で2人の公認の得票数を単純に合わせると、各選挙区のトップ当選者の票を大きく超える。今回に限って言えば、候補者を1人に絞って支持団体などの票を手堅くまとめる作戦をとれば、議席を失う事態は回避できた可能性がある。

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