狂牛病(牛海綿状脳症)問題で1月に事実上更迭された農水省の熊 沢英昭前事務次官は狂牛病問題への対応の甘さを指摘されながら、約8874万円の満額の退職金で、国民の猛反発を招いたばかり。
同氏が、食肉関連団体への「天下り」を決めながら一転、辞退していたことが16日、分かった。 今月に入り「誤解を招く」と辞退を申し出たという。
農水省などによると、先月中旬、32の食肉関連団体が加盟する「日本食肉協議会」(東京都千代田区)から熊沢氏に対して「農水行政の経験からの助言をいただきたい。 2月ごろから嘱託に就任してほしい」と要請があり、熊沢氏はこの申し出を、いったんは承諾した。
しかし、今月に入って週刊誌が、この天下りの件について熊沢氏を取材。 熊沢氏は、13日になって同協議会の関谷俊作会長に「嘱託とはいえ、誤解を受けるのは本意ではない」と電話をして、顧問就任の辞退を申し入れた。 雇用契約など書類上の正式な手続きはされておらず、報酬も決まっていなかったという。
農水省幹部は「前次官という立場であり、もう少し慎重に判断すべきだった」としている。
熊沢氏の受け入れを要請した同協議会の関谷会長も農水省OB。 国家公務員の天下り規制対象となる特殊法人ではないが、加盟団体には、雪印食品の偽装牛肉事件で、雪印食品側から偽装分を含めた在庫牛肉約280トンを引き取らされていた、狂牛病問題による「被害者」の日本ハム・ソーセージ工業協同組合も含まれていた。
熊沢氏は、狂牛病の感染源とみられる肉骨粉の牛への使用禁止を、 法規制せずに行政指導にとどめた96年当時の畜産局長で昨年1月に次官に就任。 昨年9月に国内では初めて感染牛が発見され、96年当時の対応などが批判され、狂牛病問題への責任を問われる形で先月8日に事実上更迭される形で辞任したが、約8900万円の満額の退職金を得ることで、さらに国民の批判が噴出していた。
狂牛病への対策の甘さで食肉市場の混乱を引き起こした上、感染ルートの解明は進んでいない中で熊沢氏が業界の関連団体に天下りしようとしながら、マスコミにキャッチされあわてて撤回するという情けない状況に、農水省の官僚体質はあらためて批判されそうだ。
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