【公的年金改革の問題点1】
>仮に「若い世代が拠出するカネで年老いた世代を支えるもの」が年金ならば---(中略)--- >その実態は「税金」である。 つまり今のカネで今の行政需要を支えるものに他ならない。 >今の年金財政破綻は、この屁理屈の矛盾が、素直にそのまま現れているだけ。 >「私」的な貯蓄制度と本質的には同じ。
>年金は、あくまで国民に文化的な最低限度の生活を営ませるための、憲法的な要請に >基づく公的な制度。 こうなると、今の年金財源のあり方は根本的に考え直す必要がでてくる。 >つまり、年金財源は「税金」にする、ということだ。 >年金額は、過去の掛け金額に応じてではなく、年金額は今の生活需要に応じて決定される。
→全くこの通りだと思います。 この観点も含めて公的年金に関わる問題点を挙げてみます。
【I】『ビジョンと基本方針』の欠落。
厚労省、財務省等政府をはじめ、産業界、各種団体、政治家らが様々な年金改革案を出し ている。 併し、何れも部分的、断片的、近視眼的で、問題の本質から離れて極めて矮小化 されているように感じます。
(1) まず国家の各種政策の中で、公的年金というものをどう位置付けるべきか考える必要 がある。 「公的」の文字通り公的年金は一口で言えば国民の生存・生命に直結するもの。 国民の最低限度の社会保障レベルをも決める、国家として最もプリミティブな政策の 一つである。
一方、現在の厚生年金のように事業主が一部を負担する方式にせよ、消費税を財源に するにせよ、この財源をどこに求めるかで、日本の産業の国際競争力にも直接影響して くる重大事でもある。 即ち、公的年金制度は、国家の最も基本的な姿勢を示すもので ある同時に、国家の盛衰をも左右するキイとなり得るものでもある。
(2) こんな視点から見ると、現行の公的年金の枠内で、少子高齢化という変数のみを入力 して、単に負担と給付の数字を弄んでいるだけの厚労省、財務省等政府案などは、 一顧だに値しない数字遊びに過ぎない。
世代間格差はあるにせよ、単に「100万円給付して欲しければ100万円負担しろ!200 万円貰いたければ、まず先に200万円出せ!」と言っているに等しい。 これでは、若者のみならず国民は誰一人として、年金保険料を払う気など起きないだけ でなく将来の生活不安は増す一方となってしまう。 何の意味もないマヤカシに過ぎない。
(3) 公的年金が手段ではなく国家の目的そのものであることを考えれば、手段に過ぎない 公共事業等と同列に論ずべきものではない。 今でも先進諸国中最も高いと言われている 公共事業費(対GDP比、事業単価とも)等よりも優先して取り組まなければならない筈。
「国の約束だから必要な道路はつくらなければならない」などと、「必要」の定義すら 明確にしないまま、年金論議の蚊帳の外で、高速道路9,342km全線建設を主張する議論 などは本末転倒ではないか?
(4) 国家の最重要事の一つであることを考えれば、公的年金の財源としては、公共事業や 補助金、国・地方含む議員や公務員の歳費・報酬等、国の一般会計・特別会計予算は勿論の こと、主に社会資本整備に当てられている財政投融資も含めた総合的な枠組みから議論 すべきものであろう。
この中で国民の社会保障水準と産業の国際競争力、或は他の諸々の政策とを、どうバラ ンスさせるのか?この為に国の歳入・歳出全体をどう配分するのか?ここまで考えなけ れば「改革」の名に値する「年金改革」のグランド・デザイン など描ける筈がない。
(5) 道路公団に限らず、特殊法人・公益法人(独立行政法人に移行予定も含め)の個々の 事業内容の是非も当然議論の俎上にのせなければならない。 また今後一層激しくなるで あろう雇用の流動化現象を鑑みれば、共済年金(500万人)、国民年金(7,000万人)、 厚生年金(3,300万人)の三種の年金縦割りのシステムの整理統合も、議論すべき課題 である。
(6) 国家・地方の議員の議員年金や公務員の共済年金は、国民年金や厚生年金に比べて税金 で賄う比率が大きいだけでなく給付も高額(*1)であるにも拘わらず、政府案ではこれら には何の手も付けず聖域化し、一般国民の国民年金と厚生年金のみを議論している。 盗人猛々しい悪質極まりない体質と言わざるを得ない。
(*1) http://www.ryukyushimpo.co.jp/dokusha/koe26/ke040110.html http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/030218ja17450.html http://www.weeklypost.com/jp/030704jp/edit/edit_1.html
(7) 小泉首相の言うように歳出削減は無論最優先事項である。 しかしこの言い分は、上記 の(1) 〜(6) が先にあってこそ傾聴に値する。 しかも、歳出分野別削減額ノルマや各々の 項目別の削減担当責任者名と削減スケジュール、時期別の年金財政過不足状況を国民に 明示しなければ、何の意味もない戯言に過ぎないと言わざるを得ません。
公的年金は、現行の公的年金枠内で単なる「負担と給付」の議論に終わらせてはならない。 国家のバイタル・ポイントであることを先ず認識した上で議論を始めるべきものと考えます。
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